新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.410、2006/5/15 16:29

[民事]
質問:私の家は開発分譲地内にあり一帯は5年前に分譲されました。50戸あった土地のうち駅から一番近かったので今の土地を選んだのですが、私の家の前はゴミの集積場に指定されていました。集積場は販売図面にも書いてあり、それを承知で土地を購入したのですが、分譲会社から暫定的なものですからと言われた事情もあります。しかし、年々住民が増え、ゴミを前日から出す人も後を絶たず、私の家の前は、ゴミ収集日はゴミが散乱し、悪臭がひどく、カラスや猫も現れてゴミを散らかしていくなど、これ以上住むのは耐えられなくなりました。何か良い方法はありませんか。なお、私の家の前のゴミ集積場にゴミを出しているのは現在20戸です。

回答:
1.昨今の多くの分譲地において、あなたのような悩みを抱えている方は多くいると思われます。ゴミは生きている限り誰もが出すものであり、あなた一人が一生、ゴミ集積場による苦痛を甘受するのは不公平です。50戸のうち、あなたの家の前の集積場にゴミを出しているのは20戸とのことですから、その方たちに、ゴミの出し方を守ってもらい、さらにゴミ集積場の持ち回り制(輪番制)を提案したらどうでしょうか。
2.提案の結果、全員が賛成すれば問題はないでしょうが、一部のものが反対している場合が考えられます。例えば20戸中17戸までが1年ごとに各家の前に集積場を移動する内容での輪番制に賛成し、その他の3戸は収集作業上格別の障害がないにもかかわらず、自宅前の道路を集積場にすることに反対し、輪番制を拒否しているような場合です。
3.その場合には、輪番制に反対する人を相手として、現在のゴミ集積場へのゴミの排出を差し止める訴えを提起する方法があります(一般廃棄物排出禁止請求事件)。一般にこのような差し止めが認められるかどうかは、加害者の行為が被害者の「受忍限度」を超えているかどうかが判断基準となります。つまり、社会生活は相互に譲り合いの上で成り立つものですから、常識的に考えてお互い我慢しなければならない範囲であればやむを得ないということになりますが、我慢の限度を超えていると評価される場合には、受忍限度を超えたその行為は違法となり、行為の差し止めが認められます。本件に関する裁判例としては、東京高裁平成8年2月28日判決において、ゴミ集積場へのゴミ排出による被害は当然に受忍限度を超えるものとはいえないとした上で、ゴミ集積場の存在によって被っている被害が受忍限度を超えるものであるかどうかの判断は、「単に被害の程度、内容のみにとどまらず、被害回避のための代替措置の有無、その難易等の観点のほか、関係者間の公平等諸般の事情を総合した上で行われるべきもの」であり、「輪番制等をとってごみ集積場を順次移動し、集積場を利用する者全員によって被害を分け合うことが容易に可能である」のに、そのことを「拒否し、特定の者にのみ被害を受け続けさせることは当該被害者にとって受忍限度を超えることとなる」と判断し、「判決確定後6か月を経過した日以降本件集積場にゴミ(一般廃棄物)を排出はしてはならない」としたものがあります(判例時報1575号54頁、最高裁は被告の上告棄却)。また、団地内でゴミ集積場の輪番制に反対する者に対し、自宅の前が15年間にわたりゴミ集積場になっていた者がゴミ出しの禁止を求めた訴えが認められたものもあり、こちらは前記高裁判決を引用した上で、「被害者が集積場の指定されていることを了解の上で自宅を購入したとしても、その指定は暫定的なもので、販売価格も特段の相違がないことを考慮すると、その負担は購入後のわずかの期間に限られるべきであり、被害者の甘受すべき期間は既に過ぎている」「被害者宅前の公道上をゴミ集積場所として利用する旨の黙示の合意が成立しているともいえない」として一部住民の者の拒否で「特定の者が害を被り続けるのは、社会生活一般の受忍限度を超えて、人格権の侵害に当たる」と判断しています(横浜地裁平成8年9月27日、判例時報1584号128頁、判例タイムス940号196頁、高裁で和解)。
4.あなたの場合、すでに5年間も不快な思いを我慢してきていますので、反対する3戸の方々にこれらの裁判例を示して話し合いで解決をすることからまず始めて下さい。なお、これらの裁判例を示しても反対する3戸の方が納得しない場合は、上記のような裁判を起こすこともやむを得ないでしょう。また、判決が出てもゴミを捨てる場合は、強制的にゴミを捨てる行為をやめさせることもできます。

法律相談事例集データベースのページに戻る

法律相談ページに戻る(電話03−3248−5791で簡単な無料法律相談を受付しております)

トップページに戻る