新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.396、2006/4/24 13:34 https://www.shinginza.com/qa-hanzai.htm

[刑事、夫が逮捕、起訴前弁護]
質問:夫が逮捕・勾留されてしまい,接見も禁止されています。警察署に差入れに行ったら,本や雑誌の差入れもできないと言われてしまいました。そのほかにも夫がどのような待遇を受けているのかが気になります。なんとかならないでしょうか。

回答:
1、弁護人であれば文書の授受ができますので,依頼した弁護士に差し入れたい本や雑誌を託してください(刑事訴訟法39条1項,同法81条)。また,勾留決定をした裁判所に対して,弁護人以外からの本や雑誌などの差入れを許可するように申し立てること(物の授受を制限なく禁止した裁判所の決定について一部解除を求めること)もできます(刑事訴訟法419条)。
2、そもそも,接見禁止に際して文書の授受までも禁止されるのは,文書の授受を通じて犯罪の証拠を隠滅したり,本人や共犯者が逃亡したりすることについての連絡などがされることを防止するためです。
3、しかし,検察官は,接見等禁止を裁判所に求める際,接受禁止の対象となる文書の種類を一部に限ったり,あらかじめ一部を除外したりしないことが通常で,裁判所も,必ずしも授受を禁止する文書の範囲をいちいち限定してくれるものではありません。そこで,罪証隠滅や逃亡のおそれとは無関係といえる本,雑誌,新聞紙について,授受を禁止する対象から外すように求めることが必要になるのです。
4、「たかが本や雑誌くらい差し入れられなくても」という考えもあるかもしれませんが,留置場の現状としては,他の被疑者複数と相部屋になるのがほとんどで,そのような状況下ですることもなくずっと過ごすのは大変な苦痛だといえます。また,大手インターネット関連企業の社長が逮捕・勾留されたときも,取調べの時間以外は差し入れられた百科事典を読んで過ごしていたという例が新聞やテレビで報道されていました。本や雑誌などの差入れのほかにも,弁護人であれば,被疑者から体調や処遇状況について直接話を聞いて,警察に処遇の改善を求めることもできます。
5、接見禁止中の被疑者は孤独です。絶望感や無力感からやってもいないことまで自分がやったと認めてしまうことすらあります。ご家族や弁護士という味方がいることを知れば,ご本人も勇気付けられることでしょう。ご家族には,一刻も早く弁護士にご相談なさることをお勧めします。

≪根拠法令等≫

■被拘束者との接見・接受
刑事訴訟法39条1項
身体の拘束を受けている被告人又は被疑者は,弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者(弁護士でない者にあっては,第31条第2項の許可があった後に限る。)と立会人なくして接見し,又は書類若しくは物の接受をすることができる。

■接見・接受の制限
刑事訴訟法81条本文(同法207条1項により被疑者勾留に準用)
裁判所は,逃亡し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるときは,検察官の請求により又は職権で,勾留されている被告人と第39条第1項に規定する者以外の者との接見を禁じ,又はこれと授受すべき書類その他の物を検閲し,その授受を禁じ,若しくはこれを差し押さえることができる。

■接見等禁止の解除申立て
接見等禁止の解除申立てについて定めた法令はなく,同申立ては,被疑者や弁護人の権利ではないとするのが実務の取扱いで,裁判官に対し職権発動を促す意味しか持ちません。

ただし,準抗告(刑事訴訟法429条)により,接見等禁止決定自体の一部または全部を取り消すように争うことはできます。どのタイミングでどの手段を用いるのが最適かは事件により異なりますので詳しくは弁護士にお問い合わせください。

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