新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.393、2006/4/24 13:21

[民事・消費者]
質問:知らない人から勝手に1万円が振り込まれ、利息を付けて返済するよう要求されました。要求通りに払いましたが、まだ請求されています。どうすればいいでしょうか。

結論:勝手にお金が振り込まれた場合は、利息を払う必要がありませんので、振り込まれた金額以上に請求されても、きっぱりと拒否して下さい。
1、何らかの事情によって、ヤミ金業者に自分の銀行口座を知られてしまうと、融資を申し込んでいない業者からもお金が振り込まれることがあります。また、ヤミ金業者だと気付いて融資を断ったのに、もうキャンセルできない等と言って無理矢理振り込んでくる業者もいます。そして、少額の元金に加えて、法外な利息を要求してくるのが共通の手口となっているようです。
2、ところで、元金の返還を請求された場合に、応じるか否かについては議論の分かれるところです。間違えて振り込んだのならば、そのお金は不当利得になりますので、請求に応じて返還する必要があるでしょう。しかし、当初から出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(出資法)に違反する高金利での貸付を目的として振り込んだとすると、あなたの口座への振込自体が不法原因給付とされ、返還の義務はありません。在京三弁護士会が定めた違法高利業者対応の東京三弁護士会統一基準でも、返還の義務がないとされています。
3、一方、利息については、あなたに契約の意思がない以上、金銭消費貸借契約は有効に成立していないため、利息が発生する余地はなく、業者が要求する高利の利息はもとより、法定利息も発生しません。
4、しかし、ヤミ金業者は貸付金の回収という名目で、あなたからお金を巻き上げようと必死です。中には「払わないと自宅や職場へ取立てに行く」とか、「家族に危害が及ぶぞ」等と脅してくる業者もいますが、相手も押し掛けていけば警察を呼ばれて逮捕されることぐらい解っていますので、実際に業者がやってくることはほとんどないでしょう。また、「これだけ払えばもう請求しない」、「データを消す費用だから」等と言う業者もいますが、お金を払って解決しようとすると、お金を払う人だと思われて、逆に要求がエスカレートしていきますので、絶対に払ってはいけません。
5、既に払ってしまった場合は、元金以上に払った分の返還請求をすることが法的には可能ですが、業者の住所、代表者名、固定電話の番号等詳細な情報が解らなければ、事実上回収は難しいでしょう。業者の銀行口座は、入金がある度に引き出してしまうので、あなたが振り込んだお金が残っている可能性は低いですし、その口座自体、第三者から買い取った他人名義の場合が多々ありますので、振込先と携帯番号と担当者の偽名しか解らないような状況で、回収するのは実際問題として無理です。もし、業者の詳細な情報があるのであれば、至急警察に相談して被害届を出してください。
6、金融機関等による顧客等の本人確認等及び預金口座等の不正な利用の防止に関する法律(金融機関本人確認法)は、平成15年1月6日に施行された法律です。これにより、金融機関等に顧客が預貯金口座の開設等の取引を行う際に顧客の氏名・住居・生年月日等(法人の場合は名称・本店等の所在地等)を確認すること、その確認の記録を作成し保存すること、取引の記録を作成し保存することが義務付けられることとなります。従って、この法律の施行以降は、基本的に架空名義の口座は存在しません。

≪参照条文等≫

民法 第九十条 公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。
民法 第四百四条 利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、年五分とする。
民法 第七百三条 法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。
民法 第七百八条 不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。ただし、不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りでない。

商法 第五百十四条 商行為ニ因リテ生シタル債務ニ関シテハ法定利率ハ年六分トス

出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律 第五条 金銭の貸付けを行う者が、年百九・五パーセント(二月二十九日を含む一年については年百九・八パーセントとし、一日当たりについては〇・三パーセントとする。)を超える割合による利息(債務の不履行について予定される賠償額を含む。以下同じ。)の契約をしたときは、五年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
2 前項の規定にかかわらず、金銭の貸付けを行う者が業として金銭の貸付けを行う場合において、年二十九・二パーセント(二月二十九日を含む一年については年二十九・二八パーセントとし、一日当たりについては〇・〇八パーセントとする。)を超える割合による利息の契約をしたときは、五年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
3 前二項に規定する割合を超える割合による利息を受領し、又はその支払を要求した者は、五年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
4 前三項の規定の適用については、貸付けの期間が十五日未満であるときは、これを十五日として利息を計算するものとする。
5 第一項から第三項までの規定の適用については、利息を天引する方法による金銭の貸付けにあつては、その交付額を元本額として利息を計算するものとする。
6 一年分に満たない利息を元本に組み入れる契約がある場合においては、元利金のうち当初の元本を超える金額を利息とみなして第一項から第三項までの規定を適用する。
7 金銭の貸付けを行う者がその貸付けに関し受ける金銭は、礼金、割引料、手数料、調査料その他何らの名義をもつてするを問わず、利息とみなして第一項及び第二項の規定を適用する。貸し付けられた金銭について支払を受領し、又は要求する者が、その受領又は要求に関し受ける元本以外の金銭についても、同様に利息とみなして第三項の規定を適用する。

金融機関等による顧客等の本人確認等及び預金口座等の不正な利用の防止に関する法律 
第三条 金融機関等は、顧客又はこれに準ずる者として政令で定める者(以下「顧客等」という。)との間で、金融に関する業務その他の政令で定める業務(以下「金融等業務」という。)のうち預金又は貯金の受入れを内容とする契約の締結その他の政令で定める取引(以下「預貯金契約の締結等の取引」という。)を行うに際しては、運転免許証の提示を受ける方法その他の主務省令で定める方法により、当該顧客等について、次の各号に掲げる顧客等の区分に応じそれぞれ当該各号に定める事項(以下「本人特定事項」という。)の確認(以下「本人確認」という。)を行わなければならない。
一 自然人 氏名、住居及び生年月日
二 法人 名称及び本店又は主たる事務所の所在地
2 金融機関等は、顧客等の本人確認を行う場合において、会社の代表者が当該会社のために預貯金契約の締結等の取引を行うときその他の当該金融機関等との間で現に預貯金契約の締結等の取引の任に当たっている自然人が当該顧客等と異なるとき(次項に規定する場合を除く。)は、当該顧客等の本人確認に加え、当該預貯金契約の締結等の取引の任に当たっている自然人(以下「代表者等」という。)についても、本人確認を行わなければならない。
3 顧客等が国、地方公共団体、人格のない社団又は財団その他の政令で定めるものである場合には、当該国、地方公共団体、人格のない社団又は財団その他の政令で定めるもののために当該金融機関等との間で現に預貯金契約の締結等の取引の任に当たっている自然人を顧客等とみなして、第一項の規定を適用する。
4 顧客等(前項の規定により顧客等とみなされる自然人を含む。以下同じ。)及び代表者等は、金融機関等が本人確認を行う場合において、当該金融機関等に対して、顧客等又は代表者等の本人特定事項を偽ってはならない。

違法高利業者対応の東京三弁護士会統一基準 出資法違反の高金利による貸付を業として行う者は、その「貸付行為」自体が犯罪行為であり、民事上もその貸付は公序良俗違反によって無効であるから、これら違法高利業者に対する交渉に際しては、以下の方針で臨むものとする。
1 違法高利業者に対しては、返済金、和解金その他、名目の如何を問わず、一切の支払いをしない。
2 依頼者が違法高利業者から受領した金銭は不法原因給付として返還の義務がないこと、他方、違法高利業者に対する支払いには法律上の原因がないことを前提として、違法高利業者に対し、支払った金銭について不当利得の返還を要求する。
3 具体的な取引や取立の状況について違法性を立証できるときは、刑事告発及び行政指導申告を積極的に行う。

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