新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.379、2006/4/3 17:44 https://www.shinginza.com/qa-hanzai.htm

[刑事・起訴前]
質問:娘が,パソコンを使って1000円札を偽造し,さらに,偽造したお札を自動販売機で使って釣銭を稼いでいたとして,昨日,警察に逮捕されました。通貨偽造は重罪だと聞いたことがありますが,どのくらいの期間,刑務所に入ることになるのでしょうか。また,裁判が終わるまで保釈を得ることはできるでしょうか。

回答:
1、娘さんの行為は,刑法上,通貨偽造罪及び同行使罪(148条1項,2項)に該当し,無期又は3年以上の懲役刑に処されるものとされています。通貨偽造の罪(刑法第16章)は,単なる財産犯ではなく,取引社会の基盤である通貨に対する社会的信用を害するものであることから,他の犯罪に比べて重い刑罰が定められているのです。
2、したがって,娘さんについても,実刑判決をある程度覚悟しなければならないものと思われますが,判決の具体的内容は,偽造及び使用した通貨の種類・枚数,使用回数等に基づき判断されるといってよいでしょう。
3、参考までに,公表されている通貨偽造の罪に関する近時の判決のうち,組織的な犯行ではないものを,以下列挙いたします。
@ パソコンで1万円札7枚と5000円札54枚を偽造し,計10枚を使用したという事案→懲役3年6月(求刑・懲役5年)の実刑判決(徳島地判H15.2.6)
A パソコンで1万円札を約750枚,5000円札を約1800枚偽造し,約100か所で使用(起訴されなかった分を含めると約1000万円分に相当する約1890枚を使用)したという事案→懲役12年(求刑・懲役13年)の実刑判決(大津地判H16.6.29)。
B 1万円札280枚,5000円札140枚を偽造し,少なくとも145枚を流通させたという事案→懲役10年(求刑・懲役12年)の実刑判決(横浜地判H16.12.20)。
C プリンタを使って1万円札60枚を偽造し,一部を使用したという事案→懲役2年6月の実刑判決(大分地裁H17.1.24)
D カラープリンタで1万円札69枚と1000円札468枚を偽造し,うち1万円札42枚と1000円札259枚を使用したという事案→懲役6年(求刑懲役8年)の実刑判決(高崎地判H17.1.14)
E 1万円札289枚を偽造,うち1枚を使用したという事案(共犯)→主犯格の被告人に対して懲役2年6月(求刑懲役4年)の実刑判決(静岡地判H18.3.16)
以上は,いずれも実刑判決ですが,ごく軽微な事案について,次のような執行猶予判決が下された例もあります。
F 同僚から偽造した5000円札2枚をもらい,一部をスーパーで使用したが,怖くなって店外から警察署に通報したという事案→懲役2年6月・執行猶予3年の猶予判決(横須賀地判H16.6.24)
4、なお,保釈は,一般的に,通貨偽造のような重大な犯罪については,罪証隠滅,逃亡のおそれが高いとして,許可されにくい傾向にあるとはいえますが,事案の内容,保釈金の金額等によっては,保釈が許可されることもあると思われますし,現に,証拠調べが終了した後,保釈が許可された例があります。

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