新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.373、2006/3/14 10:09 https://www.shinginza.com/qa-jiko.htm

[民事・不法行為]
質問:夫(30歳)が,交通事故に遭い,死亡してしまいました。加害者は,刑事事件で既に有罪判決を受けています。加害者側の保険会社から,民事の示談金として3000万円の提示を受けています。自分としては,幼い息子を抱え,今後のこともあり,できるだけ多くの金銭賠償を求めたいと思っています。示談に応じるべきですか。それとも,弁護士に依頼して,民事裁判をするべきですか。民事裁判をした場合,弁護士費用もかかると思いますので,教えて下さい。

回答:
1,結論・・本事案の場合に,できるだけ多くの金銭賠償を求めたいのであれば,弁護士に依頼して,民事裁判をするべきです。民事裁判をした方が,はるかに多くの金銭賠償を得られる可能性が高いと思われます。
2,交通事故保険の仕組み・・まず,前提として,交通事故保険の仕組みを説明します。自動車の所有者は,交通事故を起こした場合に備えて,保険に入っているのが通常です。そして,交通事故保険は,自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)と任意保険に分けることができます。自賠責保険は,全ての自動車の所有者が加入することが義務付けられている保険であり(それ故,強制保険とも言います。),対人事故のみ補填され,死亡事故の場合に,最高で3000万円まで被害者の遺族に補填されます。任意保険は,自動車の所有者が任意に加入する保険であり,対人事故の場合,自賠責保険で補填されない範囲(死亡事故の場合,損害額は3000万円を超えることが多いです。)を補填する,自賠責保険の上積み保険です。そして,任意保険には,通常,示談代行付きの保険が付いていますので,本事案でも,任意保険会社が民事の示談金の提示をしてくるのは,このためです。
3,任意保険会社の示談提示額は,民事裁判で認められる金額よりも,低額であるのが通常です。そして,加害者側の任意保険会社の示談提示額は,民事裁判で認められる金額よりも,低額であるのが通常です。これは,任意保険会社も営利企業であるため,極力,被害者に対する支払い額を少なくしようとする傾向にあるからです。本事案でも,加害者側の任意保険会社は,民事の示談金として3000万円を提示していますが,そもそも,死亡事故の場合,3000万円が自賠責保険から補填されますので,任意保険会社は3000万円で示談できれば,その分は全て自賠責保険会社に求償でき,自賠責保険会社が全て負担し,任意保険会社は全く負担する必要がなくなります。そこで,本事案で,任意保険会社が示談金として3000万円の提示をしたとも考えられます。
4,本事案のように,死亡や重度の後遺症を伴う傷害の被害者やその遺族は,弁護士に依頼して,民事裁判をする方が,圧倒的に有利であるのが通常です。確かに,民事裁判をすると,手間や費用がかかります。しかし,上記のように,民事裁判で認められる金額は,加害者側の任意保険会社の示談提示額よりも,高額であるのが通常です。そして,本事案のように,死亡や重度の後遺症を伴う傷害の被害の場合といった,損害額が高額な場合であればある程,その金額の差は開きます。本事案の場合,民事裁判で認められる金額は,一概には言えませんが,仮に夫の年収が500万円であった場合,8500万円程度になる可能性もあると思われます。このように,5500万円程度も違うと思われるケースもざらにあるのです。そうすると,民事裁判をする手間や弁護士費用の負担などを考えても,民事裁判をする方が圧倒的に有利であるのが通常であると言えます。
5,民事裁判をした場合,損害額の1割程度が,弁護士費用として,これも被害者の損害と認められ,加害者側(保険会社)の負担になります。さらに,判例上,民事裁判で認められた損害額の1割程度が,弁護士費用として,これも被害者の損害と認められ,加害者側(保険会社)の負担になります。よって,被害者の弁護士費用の負担は,相当軽減されることになります。
6,裁判前に,自賠責保険会社に対して,損害の一部を請求できる制度(被害者請求)も認められており,本事案の場合,3000万円が被害者の遺族に支払われる可能性があります。さらに,裁判前に,自賠責保険会社に対して,損害の一部を請求できる制度(被害者請求)も認められており,本事案のように,死亡事故の場合,3000万円が被害者の遺族に支払われる可能性があります。よって,被害者の遺族は,裁判にじっくり備えることができるのです。
7,よって,本事案のように,死亡や重度の後遺症を伴う傷害の被害者・そのご家族は,任意保険会社と示談する前に,交通事故に詳しい弁護士に,即ご相談下さい。

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