新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.371、2006/3/13 19:06 https://www.shinginza.com/rikon/index.htm

[家事・相続]
質問:昨年、私(甲)の妹が亡くなりました。妹は結婚していましたが、子供はいませんでした。また、夫との間でいさかいが絶えなかったようで、私もそのことでよく相談を受けており、亡くなる一年ほど前に「離婚した。」という話も聞いていました。妹は土地と建物を所有していましたが、子供がおらず、両親も既に他界しているため、その土地と建物は唯一の相続人である私が相続することになりました。ところが先日、離婚したはずの妹の元夫(Aさん)から、「離婚届を勝手に出された。離婚は無効だ。私は配偶者だから、相続する権利がある。裁判をする。」などと言ってきました。妹は既に死んでいるのにもかかわらず、離婚は無効だなどといって争うことは許されるのでしょうか。仮に裁判になったとして、私は裁判に関与することができるのでしょうか。

回答:配偶者であった人が既に亡くなっていても離婚無効確認訴訟を提起することは可能です。離婚無効確認訴訟が提起された場合、あなたは利害関係人として補助参加することができるものと思われます。
解説
1、まず、協議離婚が有効に成立するためには、離婚届を作成する時点のみならず、離婚届を提出する時点においても、協議離婚の両当事者ともに離婚の意思を有している必要があります。本件においてAさんは「離婚届を勝手に出された。」とおっしゃっており、これが「離婚届それ自体は自らの意思で作成し、その時点では離婚の意思もあったが、その後、離婚の意思がなくなったにもかかわらず、勝手に提出された。」という主張なのか、それとも「離婚届を偽造され、勝手に提出された。」という主張なのかは分かりませんが、いずれにしても提出の時点では「離婚の意思」がなかったという主張となりますので、この主張が真実なのであれば、協議離婚の成立要件を満たさず、離婚は無効ということになります。離婚が無効ということになれば、婚姻が継続していたことになりますので、Aさんは妹さんの配偶者であるということになります。
2、もっとも、本件では妹さんは既に亡くなっています。このような場合、訴訟の相手方はどのようになるのでしょうか。通常の権利義務に関する争いの場合は、当事者の一方が亡くなればその権利義務を引き継ぐ者(相続人等)を相手方として訴訟を提起すればよいのですが(一身専属的な権利義務を除く)、本件のような身分関係の形成又は存否の確認を目的とする訴訟(いわゆる人事訴訟)においては、そのような方法をとることはできません。そこで、人事訴訟において、当事者が既に亡くなっており、相手方となるべき者がいない場合には、公益の代表者として検察官が当事者となるものとされています(人事訴訟法12条参照)。したがって、本件においても、Aさんは検察官を相手方として離婚無効確認訴訟を提起することが出来ます。
3、Aさんから離婚無効確認訴訟が提起された場合、甲さんも陳述書を提出する、あるいは証人として出廷するという形で訴訟に関わることはもちろんあり得ます。もっとも、この関与の方法は消極的なものであるといわざるをえません。そこで、積極的に関与する方法として考えられるのが「補助参加」というものです。民事訴訟法42条には「訴訟の結果について利害関係を有する第三者は、当事者の一方を補助するため、その訴訟に参加することができる。」と規定されています。「利害関係」については議論のあるところですが、少なくとも、離婚無効確認訴訟の結果如何によって相続分が変動する本件について見れば、利害関係があると考えて問題ないと思われます。以上のとおりですので、もしAさんが離婚無効確認訴訟を提起した場合には、当該訴訟に補助参加をし、担当検察官とよく話し合いながら訴訟を進めていくようにして下さい。

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