新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.355、2006/2/17 14:13 https://www.shinginza.com/sakimono.htm

[民事・消費者]
質問:外国為替証拠金取引の勧誘を受け、業者の言うままに取引を始めてしまいましたが、利益どころか損失が増大し、さらなる追加証拠金の提供を求められて困っています。取引をやめるにはどうすればよいでしょうか。また、取引により生じた損失について、業者に対して賠償請求をすることができるでしょうか。

回答:
1、外国為替証拠金取引において損失が増大している場合には、早急に取引の手仕舞いをして取引を止めるべきです。しかし、外国為替証拠金取引の業者は、消費者の手仕舞いの要求に応じないことが多く、「もう少し辛抱すれば儲かります」とか、「証拠金が不足しているので処理できません」などといってきます。また、中には「今まで収めた証拠金がなくなってしまいますよ」などといい、追加証拠金を要求してくることもあります。このような業者の主張に応じる必要はなく、毅然と手仕舞いの意思表示をすべきです。ただ、業者に対して素人の消費者が交渉をするのは難しいところもあるので、早急に弁護士に手仕舞いの交渉を依頼した方が良いでしょう。
2、取引により生じた損失については、具体的な事情により異なりますが、公序良俗違反による無効、取消し、不法行為に基づく損害賠償請求の主張をして回収できる可能性があります。以下、それぞれの法的主張について説明します。
3、公序良俗違反による無効の主張について・・外国為替証拠金取引は、差金決済が予定された取引であり、かかる差金決済は法律等で違法性が例外的に阻却されない限り、違法な賭博に該当します。そして、現行法上外国為替証拠金取引について金融先物取引法により登録が義務付けられており、登録がなされていない無登録業者のなした取引については、実態として外国為替相場の通貨交換価値を指標とした賭博行為に当たる可能性があります。また、本件取引が、いわゆる相対取引となっている場合、相対取引は証券取引所法施行規則46条2号、証券取引法39条により禁止されている「向い玉」と何ら変わることはなく、この「向い玉」の違法性については既に多くの裁判例で指摘されています。また、相対取引が、利害関係が対立する一方が一般消費者に対して、積極的に助言を行い、高度な危険性を有する取引を勧誘するという構造を有する以上、正常な商行為とは到底認められません。さらに、実態面から見ると、金融先物取引法所定の登録をしていない無登録業者のする取引は、法的な許可がなく、不特定多数の者を勧誘し、高額の通貨証拠金を預かり、事実上運用していた場合、出資預かり金に関する法律違反(脱法行為)の疑いがあります。出資法の脱法行為であれば、代表者、担当者全員について刑事上の責任の問題とならざるをえない取引です。以上のことから考えて、無登録業者のする外国為替証拠金取引は公序良俗に違反し無効と考えられます(民法90条)。
4、取消しの主張について・・外国為替証拠金取引において、業者の従業員が、外国為替証拠金取引が極めて危険性の高い投機取引であるという契約の目的たる金融通貨証拠金取引の重要事項について不実告知をし、また、不利益事実を告知せず、あるいは金融通貨の騰落傾向について断定的判断を提供したことにより取引が開始されたなどの事情があれば、消費者契約法4条1項1号、2号、2項、4項、又は詐欺(民法96条1項)によって取消すことができます。
5、不法行為に基づく損害賠償請求について・・また、勧誘から個々の取引、終了に至る業者の一連の行為が、受託者である業者が遵守すべき法令諸規則の趣旨に違反し、受託者である業者が消費者に対して負う忠実義務等に違反する場合には、業者の消費者に対する不法行為が成立し、損害賠償を請求することができます。
6、以上のことから、外国為替証拠金取引の業者に対して、無効又は取消し、不法行為に基づく損害賠償の請求をすることが可能ですが、現実的には具体的な取引の状況によって認められるかどうか異なりますので、消費者問題に詳しい弁護士に相談をなされて、損害賠償の請求が可能かどうか調べてもらうと良いでしょう。外国為替証拠金取引の業者は、法的な規制がなされたばかりであり、依然悪質なところが多く、不法行為が認められる可能性が高いですので、積極的に弁護士に相談して違法性の調査、検討をした方がよいです。ただ、外国為替証拠金取引はリスクの高い投機取引であることは周知の通りであり、基本的には自己責任が求められる領域であるので、投資家である消費者にも落ち度があると考えられ、過失相殺がなされてしまいます。したがって、現実的には全損害の40%から60%で和解することが多いです。

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