新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.334、2006/1/13 11:07 https://www.shinginza.com/qa-hanzai.htm

[刑事・被害]
質問:先日,お酒を飲んで帰る途中,因縁をつけられ,顔面を何回も殴られ,警察が来ました。その場では,お互いに話し合うようにといわれ連絡先を交換し,それぞれ帰宅しましたが,病院に行くと全治2週間で,視力が完全に元通りにならないかもしれないと言われました。相手と連絡をとってもらちがあかないので,被害届けを出すと言ったところ,代理人から,慰謝料を払うから示談してくれという連絡が来ました。これからどのように話を進めていけばよいでしょうか。

回答:
1、あなたは,暴行を受け,それによって負傷した訳ですから,民事上加害者に対して不法行為に基づく損害賠償請求ができます。また,刑事上傷害罪で被害届けを出すことができ,警察の判断で捜査が始まれば,加害者は状況によっては,逮捕されるようなこともあるでしょう。
2、今回のような,事件がおこって直後の段階での加害者の代理人との話し合いは,最終的には加害者が金銭的にいくらあなたに支払い,その代わりに加害者を許し,被害届けを出さない,あるいは告訴をしないという形になることが多いでしょう。あなたとしては,当然被害届け,あるいは告訴をしてからであっても,法律上は相手に対して損害賠償請求権を有しますから,必ずしも今すぐに示談する必要はない訳です。ただ,和解することは,あなたにとっても十分なメリットがあります。例えば,現段階では相手方から治療費などの損害をただちに払うということを言っていたとしても後になったらやはり支払いたくないと言い出すかもしれません。上記の通り,あなたが法律上は加害者に請求できるとしても,相手が任意に支払わないのなら,あなたが裁判を起こさなければなりませんし,判決が出ても支払わないということであればあなたが強制執行までやらなけれならなくなる訳です。さらに言えば,今加害者が払うといっているのは加害者の両親が用意したものかもしれず,本人には全く資産が無いとしたら,強制執行をしても結局回収できないということもあり得ます。また,和解の際に上記に加え,今後一切加害者に近づかせないことを誓約させるよう一筆入れてもらうなどすれば家族も含めた今後の生活も安心できます。感情的なものは別にして,「それなりの」金銭を頂けるのであれば,あなたにとって加害者と示談することにはむしろ大きなメリットがあるといえるでしょう。加害者を処罰したいという感情は理解しますが,とりあえず加害者の代理人の話は聞いてみるべきでしょう。
3、そこで,示談といっても,具体的にいくらくらいの示談金を請求すればよいのか,(いくらくらいなら示談した方がよいのか)ということになります。まず,一般的論ですが,あなたは,相手方に対する民事上の損害賠償として,治療にかかった費用の実費分は当然に請求できることになります。また,それ以外の項目としては,傷害を受けたこと自体に対する慰謝料,その結果によって仕事を休まざるを得なくなった場合の休業損害,また,仮に視力が元通りにならなかった場合には,後遺症による逸失利益や慰謝料などを請求できる場合が考えられます。示談というのは,上記の各項目について請求できるとしても,すでに述べたように相手方の財産状況によっては,それを減額して示談を成立させた方が良い場合もありますし,また,本件のように被害届けを出さないような場合には,加害者がどうしても示談したいと考えれば,上乗せしてもらえる場合も有るかもしれないという意味で相場というものはありません。ただ,一つの基準として,上記の法律的に請求できる額が基準となることには間違いなく,この点については事実関係によってある程度の金額は出せることになるので,その意味での相場が知りたいということであれば専門家に相談することをお薦めします。
4、相手方の代理人との交渉は,法律上いくら請求できるのか,おおまかな目安を持った上で,あなたが納得できる額を請求し,あとはそれに対する加害者側の提案にあなたが示談しても良いと思えるかどうかの話です。あなたが納得できないのであれば最終的には示談しなければいいのであって,それはあなたが代理人をつけても同じことです。ただ,実際は加害者の代理人と対等にやりあえるかは不安があるでしょうし,また,すでに述べたように示談のメリットをふまえたとして,示談の具体的な落としどころについて判断しかねる状況があるかとは思います。そのような際は,弁護士をつけてあなたの代わりに相手方代理人と交渉することを依頼すればよいと思います。最後に,あなたの場合,後遺症が残る可能性があるようです。後遺症というのは一生つきまとうものですから,まだ後遺症が残るかどうかわからない段階で示談をされる場合には,その点についてはしっかりとした取り決めをなされるべきだと思います。

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