医師の刑事事件と医道審議会

行政|医師法7条|医道審議会|医業停止|医師免許取消

目次

  1. 質問
  2. 回答
  3. 解説
  4. 関連事例集
  5. 参考条文

質問:

医師をしていますが、先日、覚せい剤取締法違反で逮捕・起訴され、有罪判決が確定してしまいました。今後、厚生労働省、医道審議会から何らかの処分が下されるということを聞きました。インターネット検索をしたところ、そちらの事務所では医道審議会に関する弁護活動も行っているようですが、具体的にどのような活動をするのですか。

回答:

1 医師が刑事事件で有罪となると、厚労省から医業停止や医師免許取消の行政処分を受けることがあります。通常は、都道府県の医療福祉課などから事案報告書の提出を求める事務連絡が来て、これを提出すると、意見聴取期日が指定されてあなたの言い分を聞く機会が設けられます。弁護士はこれに同席して、あなたに有利な事情を主張したり、あなたに有利な事情を主張する弁明意見書を提出することができます。御心配な場合は一度経験のある弁護士事務所にご相談なさってみて下さい。

2 医道審議会に関する関連事例集参照。

解説:

1、医師の刑事事件と行政処分

医師が罪を犯し、有罪判決を受けてしまった場合、刑事罰とは別に、医道審議会(厚生労働省)による行政処分を受けることがあります。そこでは、主に医師免許の取り消し、医業停止(数ヶ月から数年まで処分は様々です)といった処分がなされます。

2、厚労省と都道府県の弁明徴取手続

具体的には、厚生労働省から指示を受けた都道府県が事実関係を調査し、本人から事情を聴取し、また、告知・聴聞の機会を与えたうえで、これらの調査結果を医道審議会に報告、医道審議会(不定期に年2回程度開催、最近は2月、7月とほぼ定期的)が協議の上処分を決定します。医道審議会の発表によると、処分は、判決における量刑と、事件の内容を元に判断することになっています。特に医師に対する信頼を損なうような行為、すなわち、業務に関連した犯罪の場合は重い処分とすることになっています。今回のケースで言えば、たとえば、覚せい剤を医師の立場を利用して入手、使用した場合などです。詳しい手続きは、当事務所のホームページ、厚生労働省のホームページなどを参照してください。

3、弁護士による弁護活動

ここでは、弁護士を依頼した場合、具体的にどのような活動をしているのかをご説明します。都道府県は、事実関係を調査して国に報告するのですが、事実関係の調査といっても、具体的には、刑事事件の判決書と、処分対象者の勤務先などのデータを収集するだけです。それらのデータを集めた後、意見聴取の機会が開催されますが、その前に「現在の心境を書いてください」という簡単な用紙を渡され、事件後の反省の気持ちや心境などを記載して提出、それらの資料が判断の資料となります。

4、提出する資料や主張すべき事情

行政庁から要求される資料は上記のとおりですが、もちろん、こちらの言い分を聞くための手続きなのですから、こちらから参考となる資料を提出することが可能であり、こちらにとって有利なことはどんな些細なことでも主張・提出しておくべきであることは間違いありません。行政庁も本人に対し、有利な資料があれば出してもよいとは言ってくれますが、なかなか当事者が自分で全ての資料を準備するノウハウや時間はないでしょう。

5、弁護士の指導・助言

弁護士を依頼した場合、処分に当たって、この処分を決定するための参考となる資料の作成、提出、意見の聴取の機会における発言、説明などを通じて、行政庁にご本人の「言い分」が適切に伝達されるよう補助する業務を行います。どのような資料をどのように作成するべきか、その内容はどのようにすべきか、などの指導、助言を行います。

6、まとめ

行政庁は、事実認定を行う機関ではないため、事実については刑事裁判の判決に従うという取り扱いをしています。すなわち、行政庁に冤罪である、などの主張をするのは適切ではありませんし、刑事裁判で有罪になった以上、行政処分も何らかの形で課されるのが通常ですから、活動は主に減軽をしてもらうためのものになりますが、処分を適切な範囲内に収めるため、適切な弁護活動が必要である場合もあります。意見の聴取において代理人活動を委任できるのは弁護士のみとなっておりますので、弁護活動をご検討の際はお近くの弁護士にお問い合わせになることをお勧めいたします。

以上

関連事例集

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※参照条文

医師法

第七条 医師が第四条各号のいずれかに該当し、又は医師としての品位を損するような行為のあつたときは、厚生労働大臣は、次に掲げる処分をすることができる。

一 戒告

二 三年以内の医業の停止

三 免許の取消し

2 前項の規定による取消処分を受けた者(第四条第三号若しくは第四号に該当し、又は医師としての品位を損するような行為のあつた者として同項の規定による取消処分を受けた者にあつては、その処分の日から起算して五年を経過しない者を除く。)であつても、その者がその取消しの理由となつた事項に該当しなくなつたときその他その後の事情により再び免許を与えるのが適当であると認められるに至つたときは、再免許を与えることができる。この場合においては、第六条第一項及び第二項の規定を準用する。

3 厚生労働大臣は、前二項に規定する処分をするに当たつては、あらかじめ、医道審議会の意見を聴かなければならない。

4 厚生労働大臣は、第一項の規定による免許の取消処分をしようとするときは、都道府県知事に対し、当該処分に係る者に対する意見の聴取を行うことを求め、当該意見の聴取をもつて、厚生労働大臣による聴聞に代えることができる。

5 行政手続法(平成五年法律第八十八号)第三章第二節(第二十五条、第二十六条及び第二十八条を除く。)の規定は、都道府県知事が前項の規定により意見の聴取を行う場合について準用する。この場合において、同節中「聴聞」とあるのは「意見の聴取」と、同法第十五条第一項中「行政庁」とあるのは「都道府県知事」と、同条第三項(同法第二十二条第三項において準用する場合を含む。)中「行政庁は」とあるのは「都道府県知事は」と、「当該行政庁が」とあるのは「当該都道府県知事が」と、「当該行政庁の」とあるのは「当該都道府県の」と、同法第十六条第四項並びに第十八条第一項及び第三項中「行政庁」とあるのは「都道府県知事」と、同法第十九条第一項中「行政庁が指名する職員その他政令で定める者」とあるのは「都道府県知事が指名する職員」と、同法第二十条第一項、第二項及び第四項中「行政庁」とあるのは「都道府県」と、同条第六項及び同法第二十四条第三項中「行政庁」とあるのは「都道府県知事」と読み替えるものとする。

6 厚生労働大臣は、都道府県知事から当該処分の原因となる事実を証する書類その他意見の聴取を行う上で必要となる書類を求められた場合には、速やかにそれらを当該都道府県知事あて送付しなければならない。

7 都道府県知事は、第四項の規定により意見の聴取を行う場合において、第五項において読み替えて準用する行政手続法第二十四条第三項の規定により同条第一項の調書及び同条第三項の報告書の提出を受けたときは、これらを保存するとともに、当該調書及び報告書の写しを厚生労働大臣に提出しなければならない。この場合において、当該処分の決定についての意見があるときは、当該写しのほか当該意見を記載した意見書を提出しなければならない。

8 厚生労働大臣は、意見の聴取の終結後に生じた事情に鑑み必要があると認めるときは、都道府県知事に対し、前項前段の規定により提出された調書及び報告書の写し並びに同項後段の規定により提出された意見書を返戻して主宰者に意見の聴取の再開を命ずるよう求めることができる。行政手続法第二十二条第二項本文及び第三項の規定は、この場合について準用する。

9 厚生労働大臣は、当該処分の決定をするときは、第七項の規定により提出された意見書並びに調書及び報告書の写しの内容を十分参酌してこれをしなければならない。

10 厚生労働大臣は、第一項の規定による医業の停止の命令をしようとするときは、都道府県知事に対し、当該処分に係る者に対する弁明の聴取を行うことを求め、当該弁明の聴取をもつて、厚生労働大臣による弁明の機会の付与に代えることができる。

11 前項の規定により弁明の聴取を行う場合において、都道府県知事は、弁明の聴取を行うべき日時までに相当な期間をおいて、当該処分に係る者に対し、次に掲げる事項を書面により通知しなければならない。

一 第一項の規定を根拠として当該処分をしようとする旨及びその内容

二 当該処分の原因となる事実

三 弁明の聴取の日時及び場所

12 厚生労働大臣は、第十項に規定する場合のほか、厚生労働大臣による弁明の機会の付与に代えて、医道審議会の委員に、当該処分に係る者に対する弁明の聴取を行わせることができる。この場合においては、前項中「前項」とあるのは「次項」と、「都道府県知事」とあるのは「厚生労働大臣」と読み替えて、同項の規定を適用する。

13 第十一項(前項後段の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の通知を受けた者は、代理人を出頭させ、かつ、証拠書類又は証拠物を提出することができる。

14 都道府県知事又は医道審議会の委員は、第十項又は第十二項前段の規定により弁明の聴取を行つたときは、聴取書を作り、これを保存するとともに、報告書を作成し、厚生労働大臣に提出しなければならない。この場合において、当該処分の決定についての意見があるときは、当該意見を報告書に記載しなければならない。

15 厚生労働大臣は、第四項又は第十項の規定により都道府県知事が意見の聴取又は弁明の聴取を行う場合においては、都道府県知事に対し、あらかじめ、次に掲げる事項を通知しなければならない。

一 当該処分に係る者の氏名及び住所

二 当該処分の内容及び根拠となる条項

三 当該処分の原因となる事実

16 第四項の規定により意見の聴取を行う場合における第五項において読み替えて準用する行政手続法第十五条第一項の通知又は第十項の規定により弁明の聴取を行う場合における第十一項の通知は、それぞれ、前項の規定により通知された内容に基づいたものでなければならない。

17 第四項若しくは第十項の規定により都道府県知事が意見の聴取若しくは弁明の聴取を行う場合又は第十二項前段の規定により医道審議会の委員が弁明の聴取を行う場合における当該処分については、行政手続法第三章(第十二条及び第十四条を除く。)の規定は、適用しない。