新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.293、2005/9/8 13:27

[民事・裁判]
質問:法律扶助制度について,教えてください。

回答:
1、法律扶助は,国民の権利の平等な実現をはかるために,法律の専門家による援助や,裁判のための費用を援助する制度です。金銭や不動産,離婚などの民事の紛争に出会った人や,刑事事件の被疑者や被告人となった人に対して,憲法32条は,「何人も,裁判所において裁判を受ける権利を奪われない。」と定め,裁判所において適正な法的判断を受ける機会を保障しています。しかしながら,今日の複雑化した手続きのもとで裁判所の判断を求めるためには,法律の専門家である弁護士の助力を必要とし,手続きの内容によっては裁判所に多額の費用を支払ったり,保証を立てたりする必要があります。また,裁判以前にも,裁判所の調停や,裁判外で交渉する必要がありますが,このような場合にも弁護士による助力が必要になります。法律扶助は,このような場合に,自分では弁護士や裁判所の費用を支払うことの困難な人のために,公的な資金で援助を行う制度です。すなわち,当事者の間の経済力の差が権利の差にならないように,社会的公平を確保するのが法律扶助の目的です。
2、日本においては,1952年以来,財団法人法律扶助協会が法律扶助を担ってきておりましたが,2000年4月には,民事法律扶助法が成立し,扶助協会が国からこの事業を行う団体としての指定を受けています。同協会は,「法律上の扶助を要する者の権利を擁護し,もってその正義を確保する」(寄附行為第5条)ことを目的としており,現在,@民事法律扶助(民事裁判費用の立替),A無料法律相談,B刑事被疑者弁護援助,C少年保護事件付添扶助,D難民法律援助,E中国残留孤児国籍取得支援活動の各事業を行っており,この他に,支部によっては外国人の法律援助,精神障害者の退院請求の援助などを実施しています。
3、以下,民事法律扶助の具体的内容についてご説明します。
法律扶助を受けるためには,一定の資力以下であることが原則であり,月収(手取り,賞与含む)の目安は次の通りです。
・単身者…182、000円以下
・2人家族…251、000円以下
・3人家族…272、000円以下
・4人家族…299、000円以下
ただし,これを上回る場合でも,家賃,住宅ローン医療費等の出費がある場合は考慮されます。また,東京や大阪などの大都市には上記の額に10%が加算されます。法律扶助によって得られるサービスは,以下の3種類です。
(1)まず,第1に,法律相談についての「相談援助」です。これは,法律扶助協会の支部,または協会の登録した弁護士の事務所で行われているもので,資力の条件をみたしている限り無料で法律相談を受けることができます。
(2)第2は,裁判や調停,交渉などについて弁護士に依頼するための「代理援助」です。弁護士に支払う着手金や報酬等を扶助協会が立替払をしてくれますが,事件について勝訴(成功)の見込みがない場合には援助を受けられません。また,扶助協会が立て替えた金額については,分割などで全額返済することが原則です。ただし,生活保護を受けていて,裁判の結果,経済的利益がなかったなど,一定の場合には,返済を免除する制度があります。
(3)第3は,弁護士に代理を依頼せず自分で裁判を起こす場合に,裁判所に提出する書類の作成を司法書士や弁護士に委託するための「書類作成援助」です。書類作成費用を扶助協会が援助しますが,この場合にも,「勝訴の見込み」や立て替えた費用の返済が必要なことは代理援助と同様です。
4、代理援助や,書類作成援助の場合,知り合いの弁護士や司法書士がいない場合には扶助協会が紹介してくれますが,知っている弁護士,司法書士に扶助協会の援助を受けて事件を依頼することもできますので,弁護士等と相談してみてください。

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