新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.285、2005/8/19 10:24 https://www.shinginza.com/rikon/index.htm

[家事・夫婦]
質問:私は,17年前に妻と結婚しましたが,9年前の私の不倫が原因で,その直後から,妻と子供が住む家を出て,別のところで暮らしています。私は,別居後,妻に離婚を申し出ましたが,いくら話し合っても妻は離婚を承諾してくれません。その後,私は,不倫相手の女性とは別れたのですが,最近,別の女性と交際ようになり,将来的には,妻と離婚してその女性と結婚したいと思っています。このように不倫をしてしまった私から,離婚を求めるということは法律上できないことなのでしょうか。ちなみに,妻との間の子供は,現在,高校1年生(15歳)と小学5年生(11歳)になっており,別居から現在に至るまで,二人とも妻の下で暮らしています。

回答:
1、離婚についてのご質問ですが,法律上,婚姻が両当事者の合意に基づく関係であることの当然の帰結として,離婚についても,原則として,両当事者の離婚に対する合意が必要とされています(民法763条)。一般的には,裁判所外での協議離婚や家庭裁判所における調停離婚などでは,両当事者が離婚に関する合意に達した場合に限り,離婚が成立することになります。そうすると,今回のケースのように,いくら話し合いをしても相手方配偶者が離婚を承諾してくれない場合には,原則として,離婚はできないということになります。しかし,相手方が不貞をした場合や,相手方の生死が一定期間不明な場合などの一定の場合には,例外的に,他方配偶者は離婚を求める裁判を提起することができ,審理の結果,裁判所が,いわば,強制的に両当事者を離婚させることができます(裁判離婚,民法770条)。もっとも,かかる裁判を提起する前には,家庭裁判所における調停を経る必要があります(調停前置主義,家事審判法18条)。
2、では,今回のご質問のケースのように,自ら不貞行為を行った配偶者からの離婚請求は認められるのでしょうか。これは,いわゆる有責配偶者からの離婚請求として,裁判実務において,長年にわたって議論が行われている問題です。そして,以前の最高裁判例は,かかる有責配偶者からの離婚請求については,例外なく認めないという態度を採っていました。しかし,国内外の離婚に対する一般的な認識の変化などもあり,現在は,有責配偶者からの離婚請求であっても,@夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当長期間に及び,Aその間に未成熟の子が存在しない場合には,B相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて過酷な状態におかれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情が認められない,という昭和62年最高裁判決の3要件が満たされれば,例外的に,離婚は認められることになりました。
3、実際の裁判では,今回のような有責配偶者からの離婚請求訴訟の場合,裁判所が上記3要件を満たしているかを総合的に検討して判断することになりますが,今回のケースでは,@別居期間に関しては,9年間であって,同居期間の8年よりも長期間に及んでいることからすれば,この要件は満たしていると判断される可能性があり,Bの過酷状態についても,相手方が裕福であったり,安定した職業に就いていたりなどの事情がある場合で,精神的にも,もはや他方を頼っていないなどの事情がある場合には,この要件も満たしていると判断される可能性もあると思われます。しかし,Aの未成熟子に関しては,多くの判例が高校生以下の子のような親の扶養を必要とする年齢の子を未成熟子と判断しており,今回のように下のお子さんが小学5年生である場合には,この要件を満たしていないと判断され,離婚請求は認められないと判断される可能性が高いと思われます。
4、もっとも,先ほども述べたように,最終的には,裁判所が諸事情を総合的に検討して離婚を認めてもよいかを判断しますので,例えば,別居後,相手方に毎月十分な仕送り(婚姻費用の支払い)を行っていた場合,離婚後も引き続き,十分な養育費の支払いを行う可能性が高いと認められる場合,自ら十分な金額の離婚給付の申し出をしていた場合などは,これらの事情を考慮して,未成熟子がいたとしても,離婚請求が認められる可能性もあります。
5、いずれにせよ,今回のように,相手方が離婚を承諾してくれない場合は,最終的には裁判によって離婚を求めざるを得ませんので,離婚が認められる可能性なども含め,一度,弁護士等の専門家にご相談されるとよろしいかと思われます。

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