新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.234、2005/6/13 14:23 https://www.shinginza.com/qa-hanzai.htm

[刑事・起訴前]
質問:私の息子が電車で通勤しているのですが、今日警察署から連絡があり、「息子さんが、電車の中で女性にわいせつなことをしたので逮捕しました。10数日間警察にいることになります。」との連絡がありました。息子は、一流企業に勤めており、要職に就いているので休めません。どのようにしたらいいでしょうか。息子に下着の差入れや伝言をしたいのですが、どのようにしたらいいでしょうか。

回答:
1、あなたの息子さんは、強制わいせつ罪(刑法176条)、迷惑防止条例という法に違反したように考えられます。現行犯で逮捕されると、通常は、42時間以内警察署に勾留され、その後更に身柄を拘束して取り調べの必要があるかどうか判断するため、検察庁に送られます(刑事訴訟法203条)。検察官は、身柄を受け取ってから24時間以内に取り調べの必要を判断して、10日間の勾留請求をするかどうかを決めます(刑事訴訟法205条)。勾留するかどうかは、所轄裁判所が判断します。

2、勾留するかどうかは、理由が必要であり、刑事訴訟法207条、60条1項に規定されています。証拠隠滅の危険があるか、逃亡の可能性があるか、住所が一定しているかなどです。

3、あなたの息子さんは、勤務先、住所が一定していると考えられるので、勾留する理由としては、証拠隠滅の危険が考えられます。即ち、被害者が主張する事件の容疑内容について息子さんの意見と相違があるような場合です。

4、息子さんが、冤罪の場合も有りますし、仮に事件を本当に起こした場合でも、捜査機関に対して、本当のことを言わない場合も有ります。この場合、一般の人は、面接が出来ないのが通常ですので弁護士に依頼して、容疑を認めているか、あるいは勾留の内容について詳しく本人に説明してもらうことが必要です。弁護士であれば、原則として日時、場所に関係なく捜査官の立会いなく(一般人の接見、面接は、捜査官の立会いのもとで行われます。)接見することが認められています。これを接見交通権(刑事訴訟法39条1項、憲法34条、憲法37条3項)といいます。

5、弁護士は、このような場合本人に事情を聞き、取調べの際に捜査官に対して容疑を認めるべきか、否認するか等の判断の相談に応じ、逮捕されてから、送検される間の3日間、すなわち、72時間の容疑者の態度、供述は重要です。なぜなら、供述内容によっては(容疑事実を全て認めた場合)、当日送検がされず一旦自宅に返される場合もありますし、送検されても検察官が、勾留請求せず在宅といって一旦自宅に帰ることを認め後日取調べを行うことがあるからです。どの段階でも否認の供述があれば勾留請求をされる場合があります。あなたの息子さんは大会社にお勤めであれば、勤務の関係から重要な問題であり、最長23日間身柄拘束の危険がある以上、どのような供述をすべきか弁護人と十分打ち合わせをする必要があります。

6、書類、物の差入れは、ご家族の方でも勾留決定後、接見禁止処分がされていない限り午前9時から午後4時ごろまで勾留されている警察署で行うことができますが、逮捕後勾留決定までの間は、一般の人は差入れができません。しかし弁護人は、いつでも差し入れと接見が可能ですので、依頼した弁護人を通じて伝言、下着等を届けることができます(刑事訴訟法39条1項参照)。

7、本罪は、迷惑防止条例違反、強制わいせつ罪が考えられますが、処罰の内容についても弁護人からの十分な説明を要します。これらの罪は、刑法上親告罪(告訴がなければ起訴して裁判をすることができない)、及び、これに準じた性格を持っていますので、後日被害者側との話し合いで、告訴の取り下げや被害弁償ができれば、犯罪を捜査官に対していったん認めたとしても、不起訴処分になる可能性もあります。至急、法律事務所にご相談ください。

≪刑事訴訟法≫
第六十条  裁判所は、被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で、左の各号の一にあたるときは、これを勾留することができる。
一  被告人が定まつた住居を有しないとき。
二  被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
三  被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
第三十九条  身体の拘束を受けている被告人又は被疑者は、弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者(弁護士でない者にあつては、第三十一条第二項の許可があつた後に限る。)と立会人なくして接見し、又は書類若しくは物の授受をすることができる。
第二百三条  司法警察員は、逮捕状により被疑者を逮捕したとき、又は逮捕状により逮捕された被疑者を受け取つたときは、直ちに犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告げた上、弁解の機会を与え、留置の必要がないと思料するときは直ちにこれを釈放し、留置の必要があると思料するときは被疑者が身体を拘束された時から四十八時間以内に書類及び証拠物とともにこれを検察官に送致する手続をしなければならない。
第二百五条  検察官は、第二百三条の規定により送致された被疑者を受け取つたときは、弁解の機会を与え、留置の必要がないと思料するときは直ちにこれを釈放し、留置の必要があると思料するときは被疑者を受け取つた時から二十四時間以内に裁判官に被疑者の勾留を請求しなければならない。
第二百七条 前三条の規定による勾留の請求を受けた裁判官は、その処分に関し裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。但し、保釈については、この限りでない。同条ニ項 裁判官は、前項の勾留の請求を受けたときは、速やかに勾留状を発しなければならない。但し、勾留の理由がないと認めるとき、及び前条第二項の規定により勾留状を発することができないときは、勾留状を発しないで、直ちに被疑者の釈放を命じなければならない。

≪憲法≫
第三十四条  何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。
第三十七条 3 刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。

≪刑法≫
第百七十六条  十三歳以上の男女に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上十年以下の懲役に処する。十三歳未満の男女に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。

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