新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.218、2004/12/16 14:06

[債務整理]
質問:10年ほど前に借金をしました。最後に返済したのは6年前ですが、最近になって元金200万円に利息と延滞金が付いて650万円の請求書が来ました。もう時効ではないのでしょうか。

回答:
1、債権の消滅時効は、特別な短期消滅時効を除き基本的に10年です(民法167条)。但し、商事債権は5年となっています(商法522条)。しかし、時効中断事由があると、中断事由が発生したときから、計算をやり直します。
時効中断事由(民法147条)は、以下のものがあります。
@債権者からの請求
裁判上の請求(民法149条)
支払督促(民法150条)
和解のための呼出し・任意出頭(民法151条)
破産手続参加(民法152条)
催告=内容証明など(民法153条)
A債権者からの差押、仮差押、仮処分(民法154条)
B債務者の債務の承認(弁済=支払も承認と同じです。)
2、まずあなたの債務(借金)ですが、債権者(借主)が、個人であれば、時効期間は、10年。商人(個人の金融業者は商人でないとの判例(東京高裁平成4年4月28日判決など)がありますので、法人である必要があります。)、サラ金の会社などですと5年となります。あなたの債権者が個人で、あなたが最後に返済してから現在までに、上記1〜3のいずれかがあった場合には、時効は中断され、その時点から時効期間を計算することになります。例えば、1ヶ月前に「お金が出来たら払います」と言ってしまっていたら、時効の計算上はまだ1ヶ月しか経っていないということになります。本件も弁済がなされているので6年前に時効はいったん中断します。逆に、上記1〜3に該当しなければ、債権が譲渡等されても、時効は中断しません。例えば、債権回収業者に債権譲渡されても、時効の計算は継続します。
3、あなたがお金を借りた相手が個人の場合は、時効期間が10年ですから、時効中断により残念ながら時効は完成していないということになります。一方、あなたが消費者金融の会社からお金を借りていたのなら、最後に返済してから6年経っているので、もう時効が完成していると言えます。しかし、時効が完成していても、当然に債権が消滅するわけではありません。あなたが時効を援用(時効の利益を受けるという意思表示)しない限り、債権は消滅しないのです(民法145条)。債権が消滅していないので、債権者はいつまでも請求することができます。
4、時効援用は相手への意思表示ですから、電話や口頭でも効力はあるはずです。しかし、理屈上はそうであっても、裁判になったら証拠の問題が生じます。時効を援用すると、相手の債権が消滅するという重大な結果を生じますので、やはり配達証明つきの内容証明郵便を利用するのが確実でしょう。そうすれば、相手に対して時効を援用した証拠が残ります。
5、仮に債権者が商人で5年の商事債権により時効が完成しても、その後にあなたが弁済してしまった場合には、時効完成後の債務の承認という問題となります。この場合も、信義則上弁済後時効の援用は出来ないというのが、判例(最高裁昭和41年4月20日判決)の考え方です。従って、5年の期間が経過しても、その後に、債務を承認していた場合、あなたは、時効の援用が出来ず支払の義務があるといわなければなりません。ただ、万が一弁済してしまった場合でも、弁済したときの状況や金額によっては、金額を支払わなくて済む場合もないわけではないので、ある程度の期間経過後の返済は注意が必要です。自分で処理することが不安な時は、相手に対応する前に、一度、お近くの法律事務所にご相談ください。
6、なお、時効完成までの期間は債権の種類によって異なります。主な債権の消滅時効期間は以下の通りです。
・1年・・1ヶ月以内の短期アルバイト給料、飲食料、宿泊料、運送料、動産の損料(レンタルビデオ料金など)(民法174条)
・2年・・商品代金、塾月謝、職人費用(民法173条)、給料・残業代(労基法115条)
・3年・・不法行為による損害賠償(※損害及び相手を知った時点から)(民法724条)
・5年・・家賃(民法169条)、商行為債権(商法522条)、退職金(労基法115条)
・10年・・判決で確定した債権(民法174条の2)、個人間の貸し借り(民法167条)

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