新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.216、2004/12/16 13:30

[刑事・被害][民事・不法行為]
質問:人前で馬鹿にされたのですが、名誉毀損罪というのは、どういう場合に該当するのでしょうか。訴える方法を教えてください。また、慰謝料を請求することはできるのでしょうか。インターネットの掲示板で馬鹿にされた場合についても教えてください。

回答:
1、名誉毀損罪は,「公然」と事実を摘示して,人の「名誉」を毀損した場合に成立します(刑法230条)。
(1) 「名誉」とは,人がその品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的な評価即ち社会的な名誉をさすものとされています。
(2) 次に「公然と」とは,「不特定または多数人に対して」という意味であると考えられていますので,少人数であっても不特定の人を相手にする場合や、特定の人々であっても多数の人を相手とする場合には、「公然と」にあたることになります。
(3) 「事実を摘示して」という要件の「事実」の意味についてですが,これは真実と異なる事実(虚偽の事実)だけではなく,真実も含まれます。
例えば,Aさんという人に前科がある場合に,「Aさんには前科がある」と言ったり,Bさんに離婚暦がある場合に「Bさんはバツイチだ」などと言った場合には,この発言は上記の「事実」にあたることになります。もちろん,前科や離婚暦がないにもかかわらず,このような発言をした場合にも該当します。このような具体的事実を伴わずに,抽象的な発言によって名誉を傷つけられた場合には,名誉毀損罪は成立しません。例えば,「Aさんは馬鹿だ」とか「Bは使えない男だ」などと言った発言は,具体的な事実を摘示しているわけではないので,名誉毀損罪は成立しません。もっとも,このような場合でも,公然と人の名誉感情を傷つけたと言うことができるときには,侮辱罪(刑法231条)が成立する可能性があります。なお,名誉毀損罪・侮辱罪はいずれも親告罪(刑法232条1項)ですので,被害者等から告訴がない場合には,起訴されることはありません。
2、次に,民事上の責任についてですが,名誉毀損罪が成立する場合には,民法上も不法行為となりますので,不法行為に基づく損害賠償請求として,慰謝料請求をすることも可能です。
3、インターネットの掲示板等への書き込みは、通常、不特定多数の人の閲覧を前提としていますので、その書き込みによって人の名誉を傷つけた場合には,名誉毀損罪ないし侮辱罪が成立する可能性があります
4、以上を前提に,今回のご質問にお答えすると,以下のとおりになります。まず,人前というものが「不特定または多数人」と言える場であり,かつ,馬鹿にされた態様が「事実を摘示して」なされたというものであれば,名誉毀損罪が成立する可能性があるといえます。次に,「公然と」の要件は満たすが,「事実を摘示して」なされた場合でない場合には,名誉毀損罪は成立せず,侮辱罪の成否が問題となります。そして,これら刑法上の犯罪が成立する場合には,民法上も不法行為に基づき,慰謝料を請求することも考えられます。ただ、請求額については,具体的言動の内容や、その場の状況などにもよりますので、一概には言えません。場合によっては、確かに不当だが、お金を払わせるまでの不当性はないとして、慰謝料請求自体が否定されることもあり得ます。インターネット上で馬鹿にされた,という場合も原則として同様です。訴える方法(刑事事件)についてですが,これは警察へ行き,被害届を提出し、告訴したい旨を告げるという方法をとることになります。詳しくは、お近くの法律事務所にご相談ください。

法律相談事例集データベースのページに戻る

法律相談ページに戻る(電話03−3248−5791で簡単な無料法律相談を受付しております)

トップページに戻る