新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.182、2004/7/20 16:40 https://www.shinginza.com/qa-hanzai.htm

[刑事・起訴後]
質問:夫がディスカウントストアで万引きをして警察に逮捕されてしまい、釈放されないまま昨日起訴されました。夫は警察に対して自分が万引きをしたことを認めており、面会の時に私にも「俺がやった」と話していました。夫は今まで犯罪をしたことがありません。夫は釈放されないまま刑務所に行ってしまうのでしょうか。

回答:
1、まず、ご主人が釈放されるかどうかについて考えてみましょう。起訴された後身柄を拘束されている被告人が釈放される制度として保釈があります。保釈が認められると被告人は釈放されて自由になりますが、裁判の日に必ず裁判所に出頭するようにするため、一定額の金銭(保釈金)を裁判所に納めなければなりません。被告人がきちんと裁判所に出頭して裁判を受ければ、裁判終了後に保釈金が全額裁判所から返還されます。この保釈金の金額は犯した犯罪の軽重など様々な事情を考慮して裁判所が決定します。ご質問のような、前科のない成人による万引き事件の場合、保釈金の目安は150万円程度となります。そこで、裁判が終わるまで裁判所に保釈金を納めることが可能な場合には,裁判所に対して保釈を請求することが考えられます。法律上は被告人の妻が自分で保釈請求をすることは可能ですが,保釈が認められない場合もあるので,専門家である弁護士に依頼して保釈を請求してもらった方が安心でしょう。ただし,弁護士が保釈請求したからといって,100%確実に保釈が認められるわけではありませんので注意して下さい。
2、次に,ご主人が刑務所に行くかどうかについて考えてみましょう。質問のように被告人が自分の犯罪を事実と認めている場合,裁判所によって有罪判決が言い渡されます。万引き(窃盗罪)の法定刑は10年以下の懲役ですから,有罪判決が言い渡されたら刑務所に服役するのが原則です。但し,有罪判決であっても,執行猶予がついた判決であれば,執行猶予期間中に新たに罪を犯さない限り刑務所に行くことはありません。そこで,被告人が自分の犯罪を認めている場合,弁護士は可能な限り執行猶予の判決を得られるように努力します。もっとも,執行猶予には法律上の要件があり,重大な犯罪(強盗致傷など)の場合には法律上執行猶予がつけられません。
3、それでは質問のケースについて,ご主人が執行猶予を得て刑務所に行かずにすむ場合があるのでしょうか。まず,窃盗罪は法律上執行猶予をつけることのできる犯罪になります。また,質問のケースでは被告人は刑務所に服役していないため,累犯も問題となりません。ですから,質問のケースで執行猶予のついた判決を得ることは法律上可能です。そうすると,次に執行猶予のついた判決を得るためにどのようなことをすればよいのかが問題となります。執行猶予がつくか否かは,様々な事情を考慮した上で裁判官が決定するので,「この事情さえあれば絶対に執行猶予になる」といった切り札は残念ながらありません。質問のような万引きの事例で執行猶予を得るためには,被告人が自分の犯罪を認めてきちんと反省していることを前提として,そのほかに少なくとも以下の事情が必要であろうと思います。
@被害者に対する謝罪と被害の弁償。謝罪については謝罪文を作成して弁護士を通じて渡すのがよいでしょう。被害の弁償については,会社の方針を理由に弁償を受け付けないところもあります。このように被害弁償の受領を拒否されたとしても,そのままにしておくのは良くありません。店の方針が変わればいつでも受け取ることができるように,供託などの方法を採るのがよいと思います。具体的な方法については弁護士と相談して下さい。
A社会復帰後の被告人の監督と再発防止。執行猶予をつける際に裁判所が気にするのが「この被告人を刑務所に入れずに直ちに社会復帰させても大丈夫か?」という点です。そこで,被告人の家族がこれからしっかりと被告人を監督していくこと,及び被告人が再び罪を犯さないようにするためにどうすればいいのか,という点を考え,裁判の際に情状証人として家族が出頭して裁判官に自分の考えを伝えていくことが大事です。
4、事案によっては上に述べた以外の事情が必要になることがあります。被告人についている弁護士が執行猶予を得るために必要な事情を考えて指示を出しますので,弁護士が出した指示に従って下さい。

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