新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.27、2004/8/2 11:58

[家事・夫婦]
質問:離婚予定ですが、子供の養育費をきちんと支払ってもらうために、何か方法はないでしょうか。給料の差押はできるのでしょうか。方法など教えてください。

回答:
1、子供の養育費をきちんと支払ってもらいたければ,離婚の際に,口約束ではなく,文書できちんと養育費の取り決めをしておいた方がよいでしょう。

2、そして,文書としては,公正証書を作成するのがよいでしょう。公正証書は,公証役場で,公証人に作成してもらうもので,詳細は公証役場に電話をして聞いて下さい。公正証書には強い効力が認められており,払わなければ強制執行されてもかまわないという文言が入っていれば(強制執行認諾文言)と言います。相手方が公正証書に記載された取り決めを守らない時は,給料差押えなどの強制執行をすることができます。

3、これに対して,養育費の取り決めを口約束でしただけの場合や,公正証書ではない通常の文書でした場合は,相手方が取り決めを守らない時は,調停や審判,裁判の提起をして成立あるいは勝訴するなどしないと,給料差押えなどの強制執行をすることはできません。

4、また,離婚調停で話し合いがまとまった場合は,相手方が養育費の取り決めを守らない時は,調停を行った家庭裁判所に対して「履行勧告」を申立てることができます。これは,家庭裁判所が直接,相手方に対して履行を勧告してくれる制度です。そして,相手方が「履行勧告」にも応じない時は,同様に家庭裁判所に対して「履行命令」を申立てることができます。相手方が正当な理由なくその命令に従わない時は,過料の制裁を受けることがあります。さらに,離婚調停で話し合いがまとまった場合も,相手方が養育費の取り決めを守らない時は,給料差押えなどの強制執行をすることができます。

5、給料差押えの範囲については,相手方にも生活がありますので,差押えが禁止される範囲が法定されています。従来は,その範囲は,給付される給料の4分の3でしたが,養育費等の履行の確保を十分に図るべきとの観点から,民事執行法が改正されて,養育費等の場合は,2分の1まで減少されました。すなわち,履行を受ける側にとってみれば,従来は,相手方に給付される給料の4分の1しか差押えができなかったのが,2分の1まで差押さえができるようになりました。さらに,従来は,弁済期が到来している分しか差押えができませんでしたが,養育費等の場合の履行の確保を十分に図るべきとの観点から,民事執行法が改正されて,養育費等の場合は,その一部に不履行がある時は,弁済期が到来していない分も差押えを開始することができるようになりました。

6、給料差押えなどの強制執行は,地方裁判所に申立てをします。強制執行を検討する場合は,弁護士に相談するのがよいでしょう。

≪条文 民事執行法≫
(扶養義務等に係る定期金債権を請求する場合の特例)
第百五十一条の二  債権者が次に掲げる義務に係る確定期限の定めのある定期金債権を有する場合において、その一部に不履行があるときは、第三十条第一項の規定にかかわらず、当該定期金債権のうち確定期限が到来していないものについても、債権執行を開始することができる。
一  民法第七百五十二条 の規定による夫婦間の協力及び扶助の義務
二  民法第七百六十条 の規定による婚姻から生ずる費用の分担の義務
三  民法第七百六十六条 (同法第七百四十九条 、第七百七十一条及び第七百八十八条において準用する場合を含む。)の規定による子の監護に関する義務
四  民法第八百七十七条 から第八百八十条 までの規定による扶養の義務
2  前項の規定により開始する債権執行においては、各定期金債権について、その確定期限の到来後に弁済期が到来する給料その他継続的給付に係る債権のみを差し押さえることができる。
(差押禁止債権)
第百五十二条  次に掲げる債権については、その支払期に受けるべき給付の四分の三に相当する部分(その額が標準的な世帯の必要生計費を勘案して政令で定める額を超えるときは、政令で定める額に相当する部分)は、差し押さえてはならない。
一  債務者が国及び地方公共団体以外の者から生計を維持するために支給を受ける継続的給付に係る債権
二  給料、賃金、俸給、退職年金及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る債権
2  退職手当及びその性質を有する給与に係る債権については、その給付の四分の三に相当する部分は、差し押さえてはならない。
3  債権者が前条第一項各号に掲げる義務に係る金銭債権(金銭の支払を目的とする債権をいう。以下同じ。)を請求する場合における前二項の規定の適用については、前二項中「四分の三」とあるのは、「二分の一」とする。

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