痴漢(ちかん)行為をしてしまったとき
痴漢容疑で検挙されてしまったとき 平成25年4月8日最終改訂

0、 痴漢事件は、男性なら誰もが巻き込まれる可能性のある事件です。普段は真面目に働いている妻子のある社会人の方でも、宴会等で多量の飲酒をした場合や、仕事上や私生活上のストレスが重なったときに、意識が朦朧として行ってしまったり、また、稀にですが冤罪事件もあります。迷惑防止条例違反の場合は法定刑が重大な事案ではないのですが、逮捕勾留を伴う刑事事件ということで、勤務先を退職に追い込まれるケースも多く、検挙直後の時点からの対処がとても大切な事件です。

1、 満員電車の中(その他、道路や公園や店舗や遊技場など公共の場所)で女性の体に触れてしまって、現行犯逮捕されたとき、あなたに適用される可能性のある法令は二つあります。ひとつは刑法の強制わいせつ罪(刑法176条)、もう一つは迷惑防止条例違反です。強制わいせつの条文は「十三歳以上の男女に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上七年以下の懲役に処する。十三歳未満の男女に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする」、迷惑防止条例(東京都)の条文は「何人も、人に対し、公共の場所又は公共の乗物において、人を著しくしゆう恥させ、又は人に不安を覚えさせるような卑わいな言動をしてはならない」、という規定の仕方がなされています。どちらの法律が適用されるか、行為態様が影響しますので、単純な基準はありませんが、下着の上から女性の体に触れた場合が迷惑防止条例違反で、下着の中に手を入れて女性に恥ずかしい思いをさせた場合が強制わいせつ罪、というのがひとつの目安と思います。迷惑防止条例違反であれば、初犯の場合は略式起訴手続で数日以内に釈放される場合もありますが、常習犯(通常は3回目以上といわれています)の場合は、通常起訴手続の公判請求されるおそれが高くなってしまいます。

2、 現行犯逮捕されると、通常は起訴されるまで(最長で23日間以内)釈放されることはありませんので、会社を無断欠勤することにもなりかねませんし、有罪が確定すると会社を懲戒解雇になるおそれもあります(ほとんどの会社の就業規則で規定されています)。そこで、弁護士が在宅での起訴や、略式起訴を求めて検察官や刑事と折衝を続けていくことになります。また、被害者の方と連絡を取り、謝罪の意思を伝えて示談を成立させ、被害届や告訴状を取り下げてもらうことで、検察官の不起訴処分を勝ち取ることもできます。

   痴漢事件は被害者のある犯罪ですから、一刻でも早く謝罪の意思を伝え被害者との示談を成立させることが極めて重要です。

3、 なお、迷惑防止条例は、平成13年9月1日施行で改正され、初犯でも6ヶ月の懲役がつく可能性があり、常習の場合は最長1年の懲役刑が規定されました。痴漢被害の撲滅を目指して条例が改正されましたので、取り締まりの強化が予想されます。

4、 痴漢行為の意図も事実も無かった場合(いわゆる冤罪事案)でも、被害者が強く訴えている場合は、手続きが進められてしまうことがあります。このような場合の対応は慎重を要します。闇雲に全面否認や全面黙秘をして冤罪のみ主張し続けて、被害者を批判したりすることが必ずしも得策とは言えません。担当警察・検察を通じて被害者に連絡を取り、折衝することにより誤解を解くことができる場合もあります。否認事件の場合には、弁護士が接見した時に供述録取書を作成し、これに被疑者の署名捺印を行い、かつ、公証役場で確定日付の付与を行い、更に、弁護人の意見書を作成し、勾留決定に対する準抗告の申立書類として裁判所に提出し、後日、刑事訴訟法322条の書面として公判に提出できる様準備(意見書は立証趣旨を起訴前弁護活動の経過とする)しておき、これを検察官、担当警察官にも報告(送付、FAX)しておくことが不起訴処分を得るのに有効な場合もあります。至急弁護人と協議しましょう。

5、 平成21年4月14日最高裁判決で痴漢逆転無罪が出た事を受けて、いわゆる警察庁痴漢通達が改正されました。平成21年6月25日通達です。適正捜査の推進が期待されますが、初期の弁護活動(被害者との示談交渉を含む)が重要であることに変りはありません。

6、 刑事事件に付随して、所轄警察から情報が出ることにより、事件のマスコミ報道や、職場等に対する連絡が行われてしまうこともあります。これについて、具体的な処理基準は法律では定められておりません。法律論でいうと、国民全体の知る権利(報道の自由、取材の自由)と、被疑者個人のプライバシー権の調整という問題ですが、公務員や一流企業社員や有資格者など、公共的な社会的地位のある被疑者ですと、報道の必要性も高まってしまうことも事実です。そのような場合には、弁護人は、事件の態様や、民事被害弁償の状況や、本人の社会的更生の必要性などを、担当警察署に粘り強く説明し、一切外部に公表しないことが必要であると求めていくことが必要となります。

7、 当事務所の相談データベース事例集をこちらで検索できます。検索ボタンを押してください。 

8、 不明な点は、無料電話法律相談03−3248−5791、受付時間外で緊急の方は携帯090−2402−5070までご連絡下さい


条文参照
刑訴第322条  被告人が作成した供述書又は被告人の供述を録取した書面で被告人の署名若しくは押印のあるものは、その供述が被告人に不利益な事実の承認を内容とするものであるとき、又は特に信用すべき情況の下にされたものであるときに限り、これを証拠とすることができる。但し、被告人に不利益な事実の承認を内容とする書面は、その承認が自白でない場合においても、第三百十九条の規定に準じ、任意にされたものでない疑があると認めるときは、これを証拠とすることができない。
2項 被告人の公判準備又は公判期日における供述を録取した書面は、その供述が任意にされたものであると認めるときに限り、これを証拠とすることができる。
同第319条  強制、拷問又は脅迫による自白、不当に長く抑留又は拘禁された後の自白その他任意にされたものでない疑のある自白は、これを証拠とすることができない。
2項 被告人は、公判廷における自白であると否とを問わず、その自白が自己に不利益な唯一の証拠である場合には、有罪とされない。
3項 前二項の自白には、起訴された犯罪について有罪であることを自認する場合を含む。



暮らしに役立つ法律知識のページへ

トップページに戻る